第80回で2024年4月からタクシー会社よるライドシェア解禁の政府方針の説明をしていましたが、以下の通りのパブリックコメントの募集がありました。
「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱い」に係るパブリックコメントの実施について|e-Govパブリック・コメント
これは行政手続法(第39条)により定められたものなのですが、行政機関が新たに規則を制定する際には広く国民の声を聞かなければならないという規定に基づくものです。
なおこのような募集があることを知ったきっかけは、会社の乗務員に意見募集要項の3ページ目の(意見提出様式)だけ1枚、特に説明もなしに配られていたからでした。
実際のところ私は法律の勉強をしていたので行政手続法にこのような規定があることは知ってはいましたが、この配布のおかげて初めて気付きました。
調べてみると制定案の概要にはより詳しい内容が記載されており、これを機会に以下の通り自分の意見をまとめ、意見提出はもちろんのこと、ブログにも掲載しようと思った次第です。
【意見内容】
①前提の話として、ライドシェア制定案の前提の議論で、過疎地の特例適用地域とライドシェア地域と分けていますが、それだけでは区分けとして不十分です。ライドシェアとされる地域の中でも、タクシー会社の採算がとれ、流しの営業も多く、自家用車が不可欠でないような大都市地域と、全く逆の地方都市ではライドシェア(供給不足)への対応が全く異なるのに、同一の制度で考えること自体がおかしいと考えますが、まず制度案に対して意見を述べます。
②以下個別の制度に対する意見 (青字は国土交通省案)
➢ タクシーが不足する地域、時期及び時間帯並びにそれぞれの不足車両数を、国土交通省が配車アプリ等のデータに基づき指定していること。
→そもそも過去のデータだけでは未来の予測することできません。また、日本全国の個別の事情をすべて国土交通省で把握するのは不可能で、したがいまして都道府県単位で首長が実情に合わせて指定できるようにルール化すべきです。
また、タクシー会社がライドシェアを管理し、現状の体制で需要の急増を対応できないところをライドシェアでカバーするという考えで行くのであれば、時期や時間を制限するのではなく包括的に地域で認可すべきです。
➢ 運行管理、車両の整備管理や研修・教育を実施する体制が整えられていること。
➢ タクシー事業者は、ドライバーに対して事前の研修(大臣認定講習を含む。)及び教育を受けさせること。
→いい加減に研修をすれば安全が確保されるという建前論からは卒業すべきで、このような規定は不要です。運行会社が責任を負うので自己の責任で必要な研修をするということで十分と思います。
なお、過疎地の特例適用地域の場合にはこのような研修の縛りがないので同じようにすべきです。
➢ 安全上支障のないよう、勤務時間を把握すること。
→別に仕事をしている人の勤務時間の把握は無理です。また、勤務内容を具体化しないと体への負担はそれぞれですので、このような規定は意味がないと思います。
➢ タクシー事業者ごとに使用可能な車両数は、地方運輸局長等が通知する範囲内であること。通知する車両数は、許可地域ごとに1.(1)の車両数の範囲内であり、かつ、事業者ごとに当該地域に配置している事業用自動車の車両数の範囲内とする。
→ライドシェアは地方都市で地域の住民の隙間時間と車を活用して、供給を補う位置づけと考えれば、1台あたりの稼働率は比較できないほど、現行の車両と比べれば低いはずです。にもかかわらず、台数として同じ扱いにするのはおかしいです。
なお、これはタクシー事業者に車両の保有台数を制限している大都市地域を意識した規定と思いますが、一緒に規定しようとするからおかしなことになると思います。
➢ 運賃は事前確定運賃により決定し、支払い方法は、原則キャッシュレスであること。
→事前確定運賃のライドシェアと一般タクシーは同時に配車手配を依頼することが、アプリのシステム上対応できるのか疑問です。システムとしてライドシェアのみ配車を依頼をするということになると、運行の台数が少ない設定ではそもそもお客から使用してもらえないと思いますので、流しとアプリ配車が主流の大都市地域では、このような制度ではライドシェアは成立しないと思います。
③以上を踏まえたまとめの意見
自家用車と一般ドライバーの隙間時間を活用したライドシェアは、地方都市で時期的な供給不足のある地域の対策として一番有効な手段と思います。そしてライドシェアについては、国が公共交通機関として設計する制度ではなく、最低限の必要なルールだけを設定すればよいと思います。後は運営会社に対して利用者が声を上げられる制度を作れば、大きな問題は起こらないと思います。
これに対して大都市地域では需給の波への対応として、全体の運行車両の効率【お客を乗せている時間】を上げるという目標をまず掲げるべきで、それでも足りない時に運行車両を増やすこと考えるべきです。私は大阪でタクシーの乗務員の仕事をしていますが、お客は他では待っているのに、駅待ちなどでタクシーが待機している現象をよくみます。今回配車アプリのデータを元に供給不足を認定するとのことですが、その時アプリで受注をしていない空車タクシーが全体でどれだけあったのかも、きちんと検証すべきです。
タクシーの乗務員がより効率的な営業をするためのデジタルを活かした環境作りと、乗務員教育も必要となりますが、国土交通省がイニシアチブを取って土台を作りと業界全体を動かすことは可能と思います。したがいまして大都市地域では、世界で見れば周回遅れのライドシェアの導入の検討ではなく、世界をリードするような効率化したタクシーサービスを目指すべきです。
最後に、県内の細かい営業区域のを撤廃して都道府県単位することや、一定のルールで区域外営業を認めるなどして、タクシーの営業の効率を悪くしている無駄な規制を無くすことは何よりも先決事項と思います。
以上が私が提出した意見で、今までブログで書いたことも含まれていますが、効率化したタクシーサービスについては、まだ纏めて触れていないかったので、次回に説明したいと思います。
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