前回からの引き続きになりますが、この規制改革会議については以下の14回会議の資料の柱書の通り、「全国各地域での移動の足不足の速やかに解消する」ことが目的です。
そして半年前からこの会議はスタートしたそうですが、「移動の足が不足している」地域(時間帯)があることが共通認識で、そのための対策として地理試験の廃止や、4月からのライドシェア開始という規制緩和や過疎地域の特例制度の改正を進めてきたという状況のようです。
なおライドシェア(自家用車活用事業)の全国での具体的な取組みについては、第96回で説明していた3月29日の国交省の発表の中にありましたが、内容は以下の通りです。
つまり、a. アプリデータで不足が測定できる地域(上記1.の8地域+既に発表している4地域の計12地域)、b. タクシー事業者の意向に基づき簡便な方法(みなし)で不足車両を算出しする地域(a.c.以外の地域)、c. 過疎特例地域(78条2号の適用可能地域)と地域が分かれます。
a.地域ではアプリのマッチング率のデータが報告となるのですが、b.c.の地域についての第14回の国交省の資料では以下の通り報告されています。
なお最初にこの下の資料を見た時に、何で私の営業地域でもある東大阪市が過疎特例地域で申請?と疑問に思い東大阪市のHPを調べたところ、2月20日の会議のライドシェアに関する資料を見つけました。以下はその中の一部ですが、
78条2号の活用予定はないと書いていますので、国交省の資料は間違いが明らかです。
なお私は国交省の事務的なミスを強調したいのではなくて、霞関が全国すべてを見るのは不可能という現実をしっかりと踏まえた方がよいのではということです。
ちなみに以下の第14回で国交省がまとめた論点整理の資料ですが、内容自体は筋が通っていると思います。
ここである委員の方から、「主に地方部」の「交通サービスを総合して、地域ごとの特性も加味しながら、「移動の足」が充足されているか検証をしていく」という文言に対して、4年前の日本版MaaSの宣言を引き合いに出され、今になっても地域の現状を把握できていないのはおかしいから、今直ぐにでも全国の資料を出すように言われていました。
この質問の国交省の担当者の回答は「コロナの影響」とお茶を濁していましたが、その他の発言を聞いていても、霞が関で全国を管理する建前(前向きに努力するという姿勢)を貫いていました。
なお、検証の結果(移動の足の不足)が出ないと先に議論が進めなくなる状況と思えましたが、第15回の会議では以下の資料が事務局から提出されていました。
これは説明にもある通り第14回の国交省の報告を元に、検討している先を全国の中で示したもので、ほとんどが対応できていないということを強調する資料となります。
そして河野大臣は移動不足は全国すべてで解消されないといけない問題として、実際には検証方法もまだまだ不十分で改善し続けるとしつつ、現状を元に議論するというよりは、「玉込め」という言葉を使い、準備の意味を含めて新しい法案作ることを強調されていました。
また第14回で以下の通り、この議論の前提となる総理の発言が示されていました。
なお総理の発言内容から今後の見通しとしては、「6月の議論」で①規制改革推進会議のたたき台をベースに新法を具体的に検討する。②一部解禁の制度改善を不断に行った結果、一定の効果あったとして結論を先延ばしする。と二つのストーリーが考えられると思います。
ちなみに今回会議を視聴して、「白タク対策」について熱心にされていたのが印象的でしたが、規制改革会議の議題としては疑問で、「緩和のための取引?」という恣意を感じました。
また、規制改革であればタクシーの営業区域の規制緩和が手始めの1丁目1番地と思います。私のブログでも第65回と第66回で触れ、第79回で全大阪個人タクシー協会会長の同じ意見の発言も紹介して、以下の記事にもありますが、業界として要望があることが知らぬはずがありません。
タクシー不足、2種免許や営業区域の規制緩和で対応を…ライドシェア「慎重な検討必要」:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)
にもかかわらず営業区域の緩和には触れないことは、政治的駆け引きがあるような気がしましたし、営業圏が絡む質問に対して国交省の担当者は避けるような対応をしていたのが印象的でした。
したがいまして、今後はどう転ぶにせよ、国民の移動の足不足解消の最優先というよりは内容面で国交省はしっかり守りたいところは守るという結論は変わらないような気がしています。
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