1月10日に東京ハイヤー・タクシー協会の川鍋一朗会長の記者会見があり都内の「ライドシェア」4月開始、タクシー不足する時間帯・エリアで導入想定 : 読売新聞 (yomiuri.co.jp) 、東京のライドシェア、平日朝などに限定 タクシー協会が指針案:朝日新聞 (msn.com) と大きく報じられていました。
年始早々のこの発表自体は、第81回で指摘した通りでデジタル行政会議の元の資料を見れば、タクシー会社のためのライドシェアでしたので、4月解禁を考えれば「阿吽の呼吸」と言えるので、この点は違和感はありませんでした。
最初に違和感を感じたのが、読売記事内の「タクシーが不足する平日朝の世田谷区や、金曜深夜帯の新宿、渋谷などでの導入を想定」のところです。
そもそも東京23区・武蔵野市・三鷹市が一つの交通圏ですので、平日朝や金曜深夜帯が全域で足りなため、新たにライドシェアを導入をするならわかります。しかしながら、その中のごく限られた地域だけが足りないなら、まず同一交通圏でのタクシーの偏在を調査してその是正をすることがコストの無駄もなく先決の話であり、その対策の気配もなく「そんなにライドシェアを導入したいの?」と感じてしまいます。
またマスコミに対する苦言となりますが、目的に対してこの手段は適切なのか?発表を鵜呑みにするのではなく、少しは自分の頭で考えて発信して欲しいのですがとても残念なところです。
しかも朝日新聞の記事では川鍋会長のそのための対策の発言として「4月には数百人のドライバーを確保したい。」とのことでしたが、実際「東京タクシー2023」で調べたところ、東京全体の乗務員数のデータですが法人・個人合わせて70,643人(p36)おり、地域・時間限定の対応ための数百人程度の話であれば現状でも十分対応が可能と思います。
またドライバー目線で疑問に感じるのは、もし自分の営業地域で偏在的にタクシー不足の地域があればそこへ行けば営業効率が上がるため黙っていてもタクシーが集まるはずです。あくまで推測ですが、平日朝の世田谷区は特に渋滞が酷く効率が悪いとか、新宿や渋谷の夜のお客はややこしい客が多くそもそも避けるドライバーが多いとか、タクシー不足は別の要因の気がします。
そして、このように地域や時間を限定して「ドライバーが集まるのかという大きな疑問」に更に追い打ちをかけるように、ドライバーに「70歳未満の制限」をかけ、しかも車両には「衝突被害を軽減するブレーキ」や「通信型のドライブレコーダーの搭載」を必須という個人タクシーをもはるかに上回る高いハードルを設けていることに違和感を感じました。
なお東京版ライドシェア解禁に対応するようにタクシー事業者が取り組む「日本型ライドシェア」導入支援を開始 『GO』配車対応のほか採用支援等を予定 │ タクシーが呼べるアプリGO 《ゴー》 │ GO株式会社 (goinc.jp)と1月12日に発表され、4つの支援の内の支援の一つに「ドライブレコーダー等の機器類の提供」を早速掲げています。
私は高いハードルの自主規制は来るべき外資の配車アプリ会社への対策と感じていましたが、GO株式会社の代表取締役会長は同じ川鍋氏ですのでGOの素早い対応を考えればなるほどとは思いました。
ただこれでも、私の「ドライバーが集まるのかという大きな疑問」は残ったままでしたがそれを見事に吹き飛ばしてくれたのが、以下のindeedの求人サイトの事実です。
まず募集元の日本自動車交通株式会社は同じく川鍋氏が創業家で取締役を務める会社ですが、堂々といま話題のライドシェアドライバーに関するアルバイトの求人として募集しています。しかも求人のポイントの5番目にタクシー車両での乗務と明記して、自家用車と2種免許不要で乗務員を採用できるのであれば、東京で数百人でも集められるのはよくわかります。
なおこの求人のデータは私が直接見つけたわけではなく、日本版ライドシェア、運転手バイト「時給1,600円〜」!タクシー会社が募集開始 | 自動運転ラボ (jidounten-lab.com)という1月22日の配信の記事で見つけました。この記事の中では、もう1社三和交通(神奈川県横浜市)のライドシェアのスターティングメンバーの募集も紹介されていますが、こちらには「自家用車をお持ちの方」が当然採用の条件とされています。
ところで、日本自動車交通株式会社の掲示している画面の一番最後の※で使用車両やその他に詳細については一部流動的であることの注意書きがあり、実は少し先走っていることがわかります。
なお、アルバイト乗務員で需給を調整する方法そのものは、第64回「タクシー会社の利益と乗務員の利益」の最後に「白タクのライドシェアの導入をしない方法でよりスマートな「タクシーの必要な方が必要な時に利用できる制度」はできる」と説明しましたが、そのための一つの手段として考えていましたので私は賛成の立場です。
したがいまして、他の方策も含めた正面を切った必要性の議論がされないまま、業界を主導する立場の者が抜け駆け的に自分の利益を追求しているように見えるのが残念なところです。
今回は以上となりますが、次回はアルバイト乗務員について私の見解をお伝えしていきたいと思います。
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