ライドシェア、大阪万博で活用へ 規制改革が中間答申 – 日本経済新聞 (nikkei.com)の記事は12月26日の規制改革推進会議記事の内容を元にしていましたが、私が気が付いたのは今年に入ってからでしたがとても驚きました。
どうしてそう決まったのか今回の記事は分かりにくいのですが、3段落目に以下の通りの答申がされたとあり、
「答申はライドシェアの導入を認める要件として、万博を念頭に「(不足が)合理的に予測される場合を含む」と記した。大阪府・市は24年秋から1年間の限定運行を求めていた。」
そして1段落目の以下の通り
「2025年の国際博覧会(大阪・関西万博)で活用するとの方針を示した。」「政府はタクシーの不足が見込まれるのを踏まえた。」
という説明ですので、答申を踏まえて結論を出したということになります。
そもそものこの付加された要件は前回の12月20日の記事ではなかったので疑問に思い、まず内閣府の規制改革推進会議のHPで調べたところ答申(中間)の中(p.8のb内括弧書)には以下の通り、しかも答申の概要にもきちんと記載(左上、4つ目の・のところ)はされていました。
「b 国土交通省は、道路運送法第78条第3号に基づく公共の福祉の確保のためにやむを得ない場合の有償運送について、利用可能なタクシー配車アプリデータ及び利用者側ニーズに係るデータ等を活用し、供給が需要に追い付かないことが多い地域、時期、時間帯(以下「不足地域等」といい、そのことが合理的に予測される場合を含む。)を特定した上で、当該不足地域等においては、タクシー会社がその不足分について、地域の自家用車・ドライバーを活用し、タクシー事業の一環として運送サービスを提供することを可能とする。」
ところが、同じように内閣府のデジタル行政改革会議の12月20日の資料を調べたところ、中間の取りまとめ案に以下の通りの(p.4下に)説明がありました。
「また、現状のタクシー事業では不足している移動の足を、地域の自家用車や一般ドライバーを活かしたライドシェアにより補うこととし、すみやかにタクシー事業者の運行管理の下での新たな仕組みを創設する。
具体的には、都市部を含め、タクシーの配車アプリにより客観指標化されたデータに基づき、タクシーが不足する地域・時期・時間帯の特定を行う。
そして、これに基づき、タクシー事業者が運送主体となり、地域の自家用車・ドライバーを活用し、アプリによる配車とタクシー運賃の収受が可能な運送サービスを 2024 年4月から提供する(道路運送法第 78 条第3号に基づく制度の創設)。」
ということで、12月20日の資料にはなかった「合理的に予測される場合を含む。」がなぜ中間答申でいきなり追加され、しかも当日にその理由で大阪万博が認定されたのかについて、日経はもう少し丁寧な説明をしてほしいところです。
そして、この機会に記事の元となった12月20日の中間の取りまとめ案をしっかり読むことになったのですが、名前はライドシェアでもこの制度改正は不足対応をタクシー事業者がやりやすくするために、2024年4月からすみやかに導入するという話で、会議の結論の見方が全く異なりました。
したがって、12月20日の記事のタイトルは「「ライドシェア」24年4月に限定解禁 全面導入に業界抵抗」でしたので、このタイトルだと業界が全面導入に対抗した結果で限定解禁になったと読者に印象を与えますが、あえてミスリードをしているのか、気づかないのか不可解なところです。
これ以外にも日経の記事のいい加減なことに気が付いたのですが、実際には12月20日の会議資料にはこれ以外にも国土交通省提出資料があり、その中の一部は以下の通りです。
以下、前回の指摘したところと、私の見解について順に説明しますと、
「新たなサービスはタクシー配車アプリの対応車両が70%を超える都市部や観光地が対象となる見込みだ。」
70%という数字は他にどこにもなく、どうも一番上の◯の全国の70%以上の地域の話を間違って伝えているようで、記事の内容は全く間違っています。
「配車アプリのマッチング率などのデータを基に都市部や観光地などでタクシーが不足する地域や時間帯を割り出す。あらかじめ定める基準を超えた場合に運行を認める方向だ。」
に対して私の意見として、
「「あらかじめ定める基準を超えた場合」にライドシェア導入については、タクシー会社に努力義務や機会を与えて、できなければライドシェア導入は仕方がないですよねという論理で至極もっともに思います。」
と書きましたが、中間取りまとめ案ではそのような表現は一切なく、このシートを見ても、言いたいことは2番目の○で「客観指標化されたデータに基づき、その不足分について、地域の自家用車・ドライバーを活用」ということで、まさしくタクシー事業者のための制度であることは明白と思います。
また、日経の記事の
「政府は法改正が不要な範囲でまずライドシェアの運行実績をつくり、効果を検証する。」
に対して私の意見として、
「4月に解禁してどうやって6月までに効果を検証して結論を出すの?という誰でもわかる絶対無理なスケジュールが平然と説明されています。」
と書きましたが、実際のところ中間の取りまとめ案の一番最後の以下の通りで、
「上記の方策について、できるものから早期に開始し、実施効果を検証するとともに、タクシー事業者以外の者がライドシェア事業を行うことを位置付ける法律制度について、2024 年6月に向けて議論を進めていく。」
と政府は日程的にタイトなところを上手く説明しています。
どうしてこのような記事を日経の記者が書いたのか私にはわかりませんが、文章で相手に伝えることを生業とするの者としてはあり得ない創作です。また、もし実際の会議での発言等を元にしたのであれば、記事として書く以上自分の説明に矛盾がないか気になると思うのですが、日本を代表する新聞でさえここまで酷いのは、そもそものスキルの程度の問題として大変残念です。
ということで、記事からおかしいと思えば記事をまず疑いその元の資料をまず当たる必要があり、前回の記事が少なくとも役所の意向とは全く違っていたということは直ぐにわかった話でした。そうすれば、最初からその違いの指摘をする今回の内容で書けばよかっただけの話となり、自分としては反省の機会となってしまいました。ただ、人間は実際に失敗しないと気づかないこともあるということで、新年早々ですが肝に銘じたいと思います。
ところで、今回会議資料を読んでタクシーの規制緩和の中に、「地理試験の廃止」だけでなく、「法定研修の期間要件(10 日)を撤廃」について、国土交通省資料では以下の通りで、もちろん答申にもとりまとめ案にも記載されていますが、
このように併記しているのに、日経の記事のまとめた表では、その他の項目で地理試験の廃止しか記載されていません。
「法定研修の撤廃」については、ライドシェアに向けて安心安全が第一で議論されているのに矛盾する内容なので、この記事の不掲載は作為を感じるのですが、この件に関わる説明は回を改めたいと思います。
最後に、実際に会議資料を読むと役人は自分の権益を守りつつうまく考えてるなというのが私の感想ですが順に説明していきます。次回はいきなり感はありますが、最終結論の位置づけであるライドシェア全面解禁について私の見解をまず説明したいと思います。
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