第82回 ライドシェア全面解禁でも黒船は来ない

業界・仕事説明

表題の中の「黒船」は藤岡雅氏の、タクシー業界とウーバーが大激突…!政府の「ライドシェア導入議論」、その「波乱の中身」と「大激論」の一部始終 (msn.com)の12月20日のデジタル行政改革会議の記事の中からお借りした表現ですが、そもそもこの記事の題に「タクシー業界とウーバーが大激突」という表現に違和感を感じていました。

というのは、2023年11月16日(木)の大阪の有識者会議におけるUber代表の冒頭の発言で(50:35~)、要約すると「この会議には諸外国の状況の説明を大阪の事務局の方に頼まれて(来ただけで)」「ここに出席されている大阪のタクシー事業者とは一緒に事業をやらせてもらっている」「9月から全国ハイヤータクシー連合会にも加入しタクシー事業を支える立場としても貢献したい」と断りを入れている態度はUberの日本での立ち位置を表しているものと思います。

ではなぜこのような態度になるか少し考えればわかると思いますが、まず、UberはGOのように配車アプリの利用者の数を圧倒的に確保して、タクシー事業者に対して強い立場ではありません。                                                                                                                                                                                                                                                                                         

そして、ユーザーにとって呼んでもタクシーが来ない配車アプリは選択から排除され、呼んで来るようになるためには登録台数が絶対的にものを言うことはわかると思いますが、そのためUberはタクシー事業者にお願いして登録台数を増やすようにしなければならない立場というのが、現状での日本での立ち位置ということになります。

またライドシェアを一般解禁されたとしても、配車アプリが日本で普及していない段階であればその利便性でUberなどが海外で実績を作った配車アプリをライドシェアで徐々に普及していく可能性はあったと思いまが、すでに配車アプリが普及している日本の都市部では、ライドシェアが解禁されたとしてもあくまで現状の補完的な位置づけしか難しいと思います。

しかも政府案の決定的なとどめは、ライドシェアでも「運行管理の義務化」です。こちらについては12月26日の規制改革推進会議の答申(中間)の(p.9)「オ タクシー事業者以外の者によるライドシェア事業のための法律制度についての議論」の中の 「【今後の検討課題】」の「2 ライドシェア事業者に対する徹底した安全対策のための規制の導入」の中の5つ目の点で「・事業者によるドライバーの運行管理(遠隔点呼(デジタル機器等を活用したアルコール呼気検査や検温による健康チェックを含む)、稼働時間管理、運行管理者」とご丁寧に運行管理者の必要性まで明記しています。

したがいましてこのような「運行管理」の条件をつけられたら、主題の通り、国内に基盤を持たないUberや海外の配車アプリ会社(黒船)は単独で進出は不可能なことはわかると思います。

ところで今回の制度改正の中で過疎地域の特例も含まれていますが、この特例の中には「運行管理」は全く出てきません。そもそも採算が取れない過疎地域で「運行管理」まで求められたら、誰も手を挙げてくれないので当たり前のことだと思います。

しかもライドシェアはそもそも多義的な意味で使われており過疎地域の特例についてもライドシェアの一つの形態と言えますが、過疎地域の特例は敢えてライドシェアには含めず、「運行管理」の必要性の論理が波及しないように、うまく工夫をしていると感じました。

ということで、「運行管理」という規制をタクシー事業者と競業する相手にもぶち込んで、今のタクシー業界を守るという考え方のようです。

なおこれに対して、既に第67回 「「安全確保のため」というライドシェアに反対する意見に対して思うこと」で「運行管理」をしていない個人タクシーを基準に反論すべきと説明していましたが、ライドシェアを推進する方は単に外国の制度の受け売りだけではなく現状の日本の制度からしっかりと考えて欲しいというのが私の一番言いたいところです。

今でもどうして個人タクシーの制度と比較をしないのか不思議ですが、大阪の有識者会議で議論の最後の質疑応答(1:37:00)で、全大阪個人タクシー協会の代表が、「ライドシェアを進める議論に対して、既に法整備のある個人タクシーと何が違うのか?」という発言ありました。

これを最初に個人タクシー側からの発言として聞いた時はびっくりしましたが、趣旨としては、「個人タクシーという制度が今あるのだから、敢えてライドシェアを導入する必要はないのでは?」という意見のようでした。

ただ、個人タクシーの資格を大幅に緩和して、車両の基準を緩めれば、諸外国の制度とほとんど同じということはわかりますので、そう考えれば「運行管理」も同じレベルで考えるべきというところまで繋がらないのかと思ったのですが、この意見そのものに対してもうやむやなままで終わってしまいました。

そして、今のタクシー会社の「運行管理」は形骸化した効率の悪いものでないかということも、つっこみどころが満載で、具体的にもっと議論すべきと思うのですがこの点は回を改めて私の意見を伝えたいと思います。


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飯田さん

前職をやめて、結果としてタクシー乗務員として仕事を始め、1年程立って昼勤営業収入(税抜き)ミリオン、を達成したのを機に、このブログを始めました。
なお、「飯田さん」の名称の意味、詳しい情報、前職をやめた経緯などについては、「飯田さんの司法試験・予備試験の部屋」のサイトで掲載されています。

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