第20回 「乗車拒否」について

業界・仕事説明

多くの方は、なんとなくタクシー乗務員は乗車拒否をしてはいけないものという認識はあると思いますが、それが違法行為であるとの認識している方は少ないと思います。

具体的には道路運送法第13条において、「(正当な理由がある場合を除いて)運送の引き受けを拒絶(乗車拒否)してはならない。」と規定されています。

ではなぜこのような規定があるかというと、医師法第19条で受任義務が定められていることは有名ですが、位置づけとしては司法書士法第21条や行政書士法第11条の受忍義務「正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。」とほぼ同じ趣旨だと思います。

ちなみに、医師法は人の生命に関わることなので重い責任を付与したものと考えられますが、弁護士法では実はありません。理由としては、弁護士に依頼する業務は単純な業務ではなく、人と人との信頼関係に基づくものなので、受忍義務は馴染まないということのようです。

以上をまとめると、資格(許可)がないとできない業務(依頼人の個性が関係がない)をしている以上、資格(許可)を持つものには受忍義務が生ずるという、法律の考え方(立法趣旨)です。

そしてさらに、「駐停車中又は客を認めて一旦停車し、もしくは徐行をした場合には、運転者は運送の申し込み内容を理解できるまで聞く義務があり、運送の引き受けを拒絶する場合には、その説明をする義務がある」としています。

したがって、「申し込みを受ける態勢に這入れば、行き先を聞いた後であるか、前であるかは問わない。」としています。

この指針を見ると、タクシーの「乗車拒否」に対して厳格に対処していく姿勢というのが感じていただけると思いますが、許可制として営業の参入を規制しているのに、国民の要望に応えられない制度となれば、国民の意思としては、許可制をやめて自由に営業に参入させろという話になるのを避けるための当然な対応といえると思います。

なお、実際にはちゃぶり行為(繁華街などで直接お客に声を掛けて長距離客だけを乗せる行為)なるタクシーの業界用語があり、根絶しがたいのが実情のようです。

さて、ここまで「乗車拒否」について背景から説明しましたが、実は少し前ですがDiDiのお客様よりタクシーセンターに対して、応答後の乗務員からのキャンセルで酷いケースがあり苦情が入ったようで、会社に対して指導の通知がありました。そして、その際に応答後の乗務員のキャンセルは「乗車拒否」にあたるというような表現があり、法律論的に考えるとどうなるのかということを私なりに考える機会となりました。

次回は、今回の立法趣旨指針の説明を踏まえて私なりの考察を説明していきたいと思います。


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飯田さん

前職をやめて、結果としてタクシー乗務員として仕事を始め、1年程立って昼勤営業収入(税抜き)ミリオン、を達成したのを機に、このブログを始めました。
なお、「飯田さん」の名称の意味、詳しい情報、前職をやめた経緯などについては、「飯田さんの司法試験・予備試験の部屋」のサイトで掲載されています。

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